江戸そばの御三家といわれている「更科」「砂場」「藪」。更科は広く名声を轟かせています。そばをあまりご存じない方でも、更科そばという言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。ここでは、そんな更科そばの特徴についてご紹介いたします。
更科そばの誕生は諸説ありますが、およそ200年前にはすでに誕生していたといわれております。場所は麻布永坂町となっており、当時行商人として働いていた清右衛門という人物が始めた「信州更科そば処 布屋太兵衛」が発祥の店とされています。ちなみに、更科そばの「更科」という表記が「更級」ではない理由は、清右衛門が恩義のある保科家の領主に申し出て、保科の「科」の字を当てること懇願し、許可が下りたことでこの表記になったといわれています。当時から多くの方がその暖簾をくぐり、更科そばを味わっていました。しかし、現在広く認知されている「白いそば」というイメージはまだ定着しておらず、いつからそのイメージが広まったのかは定かではないとされています。
更科そばは「一番粉」と呼ばれる色白のそば粉を原料として作られています。これはそばの実を挽いた際に、一番最初に出てくる胚乳の中心部分のみを集めたものであり、色のついた甘皮が混ざらないため、蕎麦に仕立てても白くなるのです。他のそばとは少し違った原料を用いるのが特徴的ですが、その味わいと香りはどのように仕上がるのでしょうか。
更科そばの麺は高級感あふれる白さが特徴的です。高級そばとしての地位も確立している更科そばですが、色合いだけでその地位を勝ち取ったのではありません。そばらしい香りが少ない一方で、ほのかな甘みがかった味わいと、のど越し際立つ食感は、これまでに多くの美食家たちを唸らせてきました。